認知症の母との日常

親を施設に預けることは親を捨てることになるのか

花

施設に親を預けるということに対して「親を捨てることになる」と悩む人は少なくないと思います。私も家族もそのことでは悩み苦しみ、何とか前に進んできました。

今の私は

親を施設にお願いすることは決して親を捨てるということではない。

そう思っています。

施設にお願いするかしないかということよりも、施設にお願いしてから後、家族がどう向き合い接するかのほうが大切。私はそう感じています。

今、母は少しずつ笑ってくれるようになっています。


母が認知症と診断されてから約3年

診断される前から「何かおかしい」と感じることはありましたが、生活ができないということはありませんでしたし年齢のせいもあるのだろうと思っていたところもありました。

母と同居していたのが妹夫婦ということもあり、私は現状を把握するのが遅かったと思います。妹にまかせっきりにしていたんですよね。本当に、今思えば情けない話です。

現在は住宅型有料老人ホームに母をお願いしていますが、それは今年の4月から。それまでにもいくつかの施設を経ています。

親の状態 家族の状況によって選択する施設は違ってくる

親を施設にお願いする理由はそのご家庭の状況、ご家族の想いによっても違っていると思います。そして、その理由や状態、状況によって選択する施設も変わってきます。

調べてみてわかったことは、本当にさまざまな施設が存在しているということ。お迎えなどを利用して日々通うデイサービスや病院と自宅の中間施設にあたる老人保健施設。24時間体制で介護を受けることができる介護付き有料老人ホームなど、まだまだあります。

主な施設の種類や特徴については後日アップしたいと思っています。

親を施設にお願いする決断は容易なことではないけれど

あくまでも私たち家族の話としてという前提の上でお話させていただきます。

うちの母が認知症と診断されたのは今から約3年程前でしたが、その診断をされる少し前に「おかしい」と思うことが起こりました。

糖尿病の食事療法のため入院していた病院で自分の病室に戻れなくなってしまったのです。どのように病室に戻れば良いのかがわからなかったようです。もう何十年も前からお世話になっていて、何度も何度も入院している病院なのに。

その時に私と妹が心配したことは「認知症」ではなく「癌(脳腫瘍)」でした。その数か月前くらいから母が急激に痩せてきていたからということと、父を癌で亡くしているということもありました。

色々な検査をしていただきましたが特に異常は見られない。でも、やはり何となく母の言動に異変を感じるのです。その時はまだ何となくという程度でした。

母が認知症と診断されるまで

糖尿病の食事療法も終了し退院した母。

その頃私は実家から少し離れたところに住んでいました(現在は実家の真裏に住んでいます)ので母のことは妹夫婦に任せていました。実家に行くのは多くても週1回くらい。月に2,3度が良いところです。そういうこともあって母の状況、そして母と同居している妹夫婦の状況が全くわかっていませんでした。

いえ、これは言い訳ですね。知ろうともわかろうともしていなかったのだと思います。

ところがある時、母というよりも妹の言動がおかしいと感じ始めました。もともと勝気で気の強い妹ですが、少し異常性を感じてしまうほど言動が激しい。言うことが度々違う…ほかにも色々と。

そのことに私が気づき始めてから少ししてからでした。母がアルツハイマー型認知症と診断されたのは。

なぜ妹の言動がおかしくなっていったのか。その時はわからなかったのですが、実家の真裏に引っ越し母の介護を妹と共にするようになりようやく理解できました。苦しんで苦しんで、自分だけではどうしようもなくなり、でも姉の私の生活を考えると頼ることもできない。だからと言って母を見捨てるなんてことは絶対にできない。

もう心身ともにいっぱいだったのでしょうね。

母を施設にお願いするという決断は家族みな、本当に悩みました。施設に対する偏見、親族の目や意見、周りの目。そして何より、施設にお願いすることは母を捨てることになるのではないのか…そんな想いもあったからです。

母のことで家族が言い合いをする日々

現在は住宅型有料老人ホームで生活している母ですが、最初からそちらにお願いしたわけではありません。いくつかの施設を経ています。

  1. デイ・サービス
  2. 小規模多機能型居宅介護施設
  3. 精神科病院
  4. 看護小規模多機能併設住宅型有料老人ホーム

こういう経緯を経ています。

最初はその日の朝お迎えに来ていただき、夕方には自宅に帰るデイサービスを利用しました。この時はまだ家族の心の葛藤はほとんどなかったと言えます。日中、母をひとりにしておくことが心配なので、家族が仕事で留守にしている時間だけのお願いでしたから。子供を学校に行かせているというくらいの感覚だったと思います。

ですが、小規模多機能型居宅介護施設にお願いせざるを得ない状況になってきたあたりから家族みなが罪悪感のようなものを抱えることになっていきます。

小規模多機能型居宅介護施設はサービスを組み合わせて利用できますのでとても利用しやすいですし、家族の疲労も軽減されました。ですがその頃の私たちは「宿泊」を組み込んでもらっていることに対して罪悪感が日々増していったという感じでした。

そして、母自身にも「捨てられる」という思いが。

母のことで家族が言い合いになることも多く、みなの顔がみるみるきつくなっていく。本当に凄まじかったですね。いくら母は認知症だとはいえ、何もわからないわけではないのです。

「私がいなくなれば良いんだよね」

「私は捨てられるんだよね」

そんな言葉を母に言わせてしまっていた私たち。

母を施設にお願いしているという罪悪感と、どう接して良いのかわからない母の言動に対する戸惑いと腹立ち。そんな感情が交互に心の中で入り混じるようなそんな日々でした。

そのうち母のある症状が悪化しはじめたことで小規模多機能型居宅介護施設でもこのまま受け入れることが難しいと判断されてしまいます。その症状というのが「不眠」です。

ただ寝ないだけでしょ?と思われる方もおられるかもしれませんが、この不眠という症状が私たちが介護していく上で一番悩んだ症状なのです。寝てくれないだけでなく30分、ひどい時には5分おきくらいにトイレにいきたがり、そのたびに誰かを起こすのです。そして母に付き添ってトイレに行かなくてはならない。

小規模多機能型居宅介護施設にお願いしなくてはならなくなった原因もそこでした。

その症状が一番ひどかった頃は夜中だけでトイレに20回~30回です。私たちは全く眠れないまま仕事に行かなくてはならない。そして帰宅しまた同じことの繰り返し。

小規模多機能型居宅介護施設にお願いした当初は受け入れ可能だとおっしゃっていただけていました。しかし、だんだんとその症状がひどくなり、母がトイレで起きるたびにスタッフさんが付き添わなくてはならず、他の入所者さんに手がまわらないということで問題になってしまったのです。

その症状を何とかしなくてはどこの施設でも受け入れは困難だろうということから精神科病院に入院することになります。

自宅から車で1時間くらいかかる病院に入院していましたので、母が入院中は私も妹も仕事をお休みしほぼ毎日病院に通いました。1か月半の入院で不眠を改善していただき、今の住宅型有料老人ホームに入所することになったのです。

できるだけ早めに施設を見学しておいたほうが良い

母が入院中、私と妹はたくさんの施設を見学しました。事前に予約をし、母が入院している病院に行った後で施設を見学。それを繰り返す日々でした。老人保健施設、小規模多機能、看護小規模多機能、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム…。

人に聞くのと実際に見るのとでは感じ方は全く違います。とても評判が良いと聞いていた施設でも実際に見てみると「こんなところに母をお願いできない」と感じてしまうような施設があったのも事実です。

施設を見学する前に絶対に外せない重要な点をピックアップしておいたほうが良いですね。優先順位というか。見学した際にその点をしっかり質問してみてください。曖昧な答えが返ってくる場合は論外。その対応が難しいなら難しいではっきり答えてくださるかどうかも重要な点だと思います。

どの施設を選択するにしても100%を望むのは厳しいです。

ここは良いけれどここは…という点は必ずといっていいほど出てきます。

私たちは80%くらいを目指して施設を探しました。残りの20%は私たち家族で何とか補えるのではないか…。

家族で補える部分はどういうことがあるのかを書き出しておくと施設を選ぶ際にいくらかスムーズです。実際に私たちは施設で対応が難しい部分を家族で補うようにしています。

施設の見学は出来るだけ早めにしておいたほうが良いと思います。すぐに入所する予定はなくても、どこにどういった施設があるのかを実際に見て把握しておくといざという時に問い合わせもしやすいですので。

母は今幸せなのだろうか

花

この答はきっとずっとわからないままなのでしょう。

母の認知症は進行していて、今は言葉をちゃんと発することも難しい状況です。伝えたいことがあっても言葉に出てこない。「暑い」「寒い」も「嬉しい」「悲しい」も言葉にしては出てきません。こうなのだろうと予測して動くしかない。

その時に気を付けていることは「決して自分に都合の良い解釈、予測をしない」ということです。

例えば、母はトイレに行きたい時、「トイレ」と言える時もあるにはありますが叫ぶような声を出すことが多い。でもその声はトイレの時だけとは限らないのです。

その声が出た時に「トイレね」と判断し介助するのですが、「さっきトイレに行ったのだから違うでしょ」という判断は自分の都合による判断。特に忙しい時や疲れている時にはこういう自分に都合の良い判断をしがち。こういう判断にならないように気を付けているんです。

最初に、親を施設にお願いすることは親を捨てるということではないと書きました。

なぜそう言えるのか。

私たちは今、心に余裕を持って母の介護が出来ているからです。

施設にお願いして後はすべてを任せているわけではありません。

施設にお願いしてから家族が親とどう接していくのか。どこまでを施設にお願いし、どこまでを家族で対応していくのか。それはそれぞれのご家庭の状況によってできること、できないことが違うと思いますので一概には言えませんが。

今は1週間か2週間に1度は自宅に連れて帰ります。妹が福祉車両を購入してくれたので母を連れて外出することもできるようになりました。

今の施設に行きつくまでにはさまざまなことがありました。家族で罵り合いのようなことになったこともあります。母の見ている目の前でです。

トイレの介助ひとつとっても、今は「自分に都合の良い判断をしないように気を付けている」と言える私ですが、もし現在も施設にお願いできないままでいたとしたら…。きっと日々母にきつくあたっていたのではないかと思うのです。

あの頃は腹が立っていたことでも今は笑顔で対応できる。この違いは介護をする上でとても大きなことだと思います。

毎日のように夜中ベッドで泣いていた母を思い出します。自分のことが自分でできなくなっていく、捨てられるかもしれない、これからどうなるのだろう、そんな不安で泣いていたのでしょうか。その泣き声さえ耳について腹立たしく感じていたあの日々。

優しく声をかけてあげることも出来なかった。それどころか、暴言を吐いてしまったことも何度も何度もありました。

今、母が幸せなのかどうか。その答えを私が答えることはできません。

ですが、母は今、とても穏やかな顔をすることが多くなりました。時折笑顔を見せることもあります。施設のスタッフさんもとても優しく、小さいことでもすぐに私たち家族に報告してくださいます。本当に感謝しています。

ひとりで悩まずに相談を

もし現在、親御さんを施設にお願いするかどうかを迷っておられる場合は、まず地域包括支援センターに相談してみてください。

地域包括支援センター
介護保険法で定められた、地域住民の保健・福祉・医療の向上、虐待防止、介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関である。各区市町村に設置される。2005年の介護保険法改正で制定された。
センターには、保健師、主任ケアマネジャー、社会福祉士が置かれ、専門性を生かして相互連携しながら業務にあたる。
引用元:wikipedia

地域包括支援センターには社会福祉士やケアマネジャー、保健師など専門家の方がおられます。親御さんの状況、ご家族の状況など相談にのってくださいますし、介護保険、施設などを利用する際の手続きの仕方なども教えてくださいます。

今の親御さんの状況であればこういった施設はどうか…などの提案をしていただけたりということもありますし。

私たちの場合、義理の弟(妹の旦那さん)もとても協力的だったのでスムーズに物事が進んだことも多かったのかもしれませんが、そうではないご家庭もあると思います。

そういう状況なども地域包括支援センターでお話して、どう対応していくのが良いのか、似たようなケースはなかったのかなど聞いてみると良いかもしれませんね。